彼女に浮気がバレた。

女がインスタに載せた料理の写真に俺のiPhoneが映ってた。好きな海外チームのステッカーを貼ったケースは何の言い逃れも出来ないほど俺のもので、木兎達と遊ぶとことごとく嘘をついた日付の投稿だったこともあって共通の知り合いから簡単にバレた。

俺の何がそんなに分かりやすいというのか、出かけようとしただけなのに姉ちゃんにも「アンタちゃんに捨てられたら終わりだね」だなんて言われた。そう、俺はに捨てられたら終わりだ。

部活を引退してから面白いほどにモテた。春高で決勝まで行ったことで知名度を上げたのか、全く知らない下級生に呼び出されて告白された日には流石に調子に乗ったし、卒業前のバレンタインは過去最高の数だった。

大学に入ってさらに余裕が出来ると女の扱いが少し分かった。ちょっかいをかけた子が少しずつ自らの手に落ちる気持ち良さを知った。世の中には優しくて可愛い女の子がたくさんいる。部活だけやってる頃は知らなかった。あの頃は、だけいれば良かった。


「秋紀はさあ、何でバレるしょうもない嘘ばっかつくの」
「ごめん…」
「遊びたいなら別れよって言ったじゃん」
「…そんなんじゃない」
「もう私許し方が分かんない、お願い、距離置こ」
「…俺ら終わっちゃう感じ?嫌なんだけど…」
「考え中、秋紀はどう思う?」
「…に捨てられたら泣く…」


泣きたいのはこっちだよ、とが大きなため息をつく。何故かこんな時ですら、あんな匂わせ女はやめておけば良かったとかそんなことしか考えられない。多分またしばらくを大事に出来る。でもまたその機会が来た時俺は自分を律することが出来るんだろうか。自信がない。でも出来ればにはずっとそばにいて欲しい、俺が俺でいられるように。

と結婚したい…」

つい口から溢れでた幼稚な願望は駄々をこねる子供の我儘のようで、支離滅裂だ。苦し紛れに手を握ってみるけど、「馬鹿じゃないの」と一蹴された。きっとそのうち俺は捨てられる。






稚拙な心臓